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  • 非財務情報の開示へ向けた取り組みについて(第9回:最終回)
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非財務情報の開示へ向けた取り組みについて(第9回:最終回)

2023年12月 19日

常務理事パートナー  山本 公太(三優ジャーナル2023年12月号) |

≪はじめに≫
 一昨年の12月に「非財務情報の開示へ向けた取り組みについて」と題してクライアント向けセミナーを開催し、大変多くの方にご視聴いただきました。当該セミナーでは、最近ESGの観点からも目にすることが多い「価値創造ストーリー」と同じく関心が高いと思われる気候関連開示のうち、特にハードルの高いTCFD提言の「シナリオ分析」と「GHG排出量計算」を中心に、その取り組みを始めるための基礎的な知識について説明いたしました。本稿では、当該セミナーにおいて時間の都合上割愛した内容を中心に、引き続き解説します。

≪GHG排出量の算定≫
 TCFD提言及びその後のISSB(国際サステナビリティ基準審議会)において、開示が求められるGHG排出量は以下の3つとなります。
 Scope1:自社の燃料使用に伴う直接排出量
 Scope2:自社が購入した燃料の間接排出量
 Scope3:サプライチェーン排出量(商品・サービスの調達、販売、輸送、廃棄など)
 このGHG排出量は、経済統計等で用いられる「活動量」に「排出係数」を乗じて算出するというのが基本となり、今回はScope3について解説します。なお、実際の算定には詳細な分析、手続きが必要となり、CO2以外の排出量も含まれますが、前回のScope1、2と同様に基本を理解するため、ほぼ全ての企業に影響する「エネルギー起源CO2」に限定して概要を解説します。

≪Scope3「サプライチェーンの排出量」≫
 GHGの排出量算定において、最も労力を要するのがScope3の「サプライチェーン排出量」であり、その名のとおり自社を中心とするサプライチェーン全体での排出量が対象となります。その主な特徴としては、以下の点が挙げられます。
・15のカテゴリが設定されている。
・自社を起点に上流と下流に分類される。
・カテゴリごとに計算式が異なる。
・GHGプロトコルが定める国際的な算定基準がある。
・算定対象は、原則として企業グループ全体とされている。

≪15のカテゴリ分類≫
 前述のとおりScope3は、15のカテゴリに分類されており、原材料の調達から販売した製品の使用やその後の廃棄に至るまで広範囲な活動が対象となります。また、自社を起点にカテゴリ1から8までが上流、カテゴリ9から15までが下流として分類されます。
 それぞれのカテゴリにおいて、該当する活動(例)は以下のとおりです。


※1Scope3基準及び基本ガイドラインでは、輸送を任意算定対象としています。
※2Scope3基準及び基本ガイドラインでは、輸送を算定対象外としていますが、算定頂いても構いません。
出所:グリーン・バリューチェーンプラットフォーム「サプライチェーン排出量 概要資料」より抜粋

≪基本的な算定式≫
 Scope3におけるGHG排出量の基本的な算定式は、「CO2排出量=活動量(物量・金額など)×排出原単位」であり、排出原単位は、環境省「排出原単位データベース」で確認することが出来ます。そのため各カテゴリにおける「活動量」が何を表すのかを理解すれば、基本的な算定のイメージを掴むことが出来ます。

≪活動量/Scope3≫
 以下の表は、Scope3の各カテゴリにおける活動量とは何かを理解するために、簡略化したイメージを記載しています。


 実際の算定に際して、取引先等に実測値に関する情報提供を依頼してScope3を算定する場合、算定のために膨大な労力及びコストを要することが懸念されます。そのため、まず「簡便的な算定方法」により全体像を把握し、次に、特に排出量の多いカテゴリについて実測値を元に算定したうえで、削減方法を検討することが効率的であると考えます。

≪最後に≫
 以上、「非財務情報の開示へ向けた取り組みについて」と題して、全9回の連載で「価値創造ストーリー」、「シナリオ分析」及び「GHG排出量計算」を中心に、その取り組みを始めるための基礎的な知識について解説いたしました。